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オーストラリア炭素関税:排出量の多い輸入品に課税することの国内製造業への影響

荒川尚子
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現在、オーストラリアへの輸入品には一般的に5%の関税が課せられますが、商品の原産地と性質によっては免税されています。 しかし、政府の新しい炭素排出目標の一環として、排出量の多い輸入品に対する関税が近い将来導入されると予想されています。
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提案された排出目標を順守するために、オーストラリア気候変動・エネルギー大臣は、2030年まで温室効果ガスの排出量を年間5%削減することを、国内で多く炭素排出しているトップ215社に汚染上限を強制する提案をしました。

これらの排出目標が挑戦的であることは間違いありませんが、組織が遵守しない場合に罰則が設けられているため、長期的にはビジネス、製造プロセス、およびサプライチェーン全体でよりサスティナブルな事業戦略の構築と運営にプラスの影響が見られると期待されいます。

平等で競争力のある市場を作る

提案された炭素関税は、政府の排出目標を遵守するために二酸化炭素排出量削減対策に資金を投資する国内の製造業者に限っては、競争力が低下し不利にならないようにする仕組みとなります。 炭素関税は、クリーンな排出物に着目した製造、より環境に優しい生産品、したがってより持続可能なサプライチェーンの魅力を通じて、国内の製造能力への投資を奨励し、増加させる可能性を意味しています。

関税は、より持続可能な事業運営を促進するだけでなく、輸出入時のESG慣行の推進にも役立ちます。 「グリーンウォッシング」がますます目立ってきているなか、この措置は、コンプライアンスや競合他社のパフォーマンス指標を超えて、真に持続可能な戦略を基礎とする事業運営形態を推進するのに役立つと期待されています.

「Made in Australia」キャンペーンと連携して、この関税はサステナビリティを推進するだけでなく、オーストラリアで付加価値を生み出す製造業に新たな機会を生み出す可能性を秘めています。 事業、戦略的野心、およびそれらがESG、人々、およびコミュニティの約束にどのように結びついているかを再考する機会とも言えます。

この関税の導入により、オーストラリアは、欧州連合(EU)が計画している炭素境界調整メカニズム(CBAM, Carbon Border Adjustment Mechanism)や、日本、英国、カナダなどの他の主要な貿易相手国とともに、これらの措置の最前線に立つことになります。 特定の商品の炭素排出目標を先取りすることは、主要な貿易パートナーとの新しい輸出市場の創出に役立ち、サプライチェーン全体で熟練した雇用を促進します。

商品とコンプライアンスへの影響

炭素関税は、商品の原産地と関税分類に基づいて適用される可能性があります。 したがって、輸入業者は、ビジネスへの潜在的な影響を評価する必要があります。 これには、関税プロファイルを完全に理解すること、および追加の関税が販売される商品のコストにどのように影響するかが含まれます。 関連当事者間取引を行う企業の場合、商品の調達先を変更すると、移転価格に影響を与える可能性があるため、波及効果が生じる可能性があります。

誤った報告は関税の回避につながる可能性があるため、企業はコンプライアンス義務についても深く理解する必要があります。

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